歯根からの毒

歯から出る毒素が引き起こす症状と解決法について

死んでしまった歯に関する重要な問題点についてのお話です。

生きている歯は「神経が生きている歯」で、死んでいる歯は「神経が無くなった歯」のこと。

歯の神経まで虫歯が広がってしまったとき、神経を抜かざるをえなくなります(抜髄)。これをわかりやすいように死んだ歯と表現しています。

神経を抜けば痛みから解放される!などと、喜んでばかりはいられません。死んだ歯は、根っこの先から毒素を発生させるようになるのです。死んだ動物たちが腐っていくのと同じです。

この記事は、YouTube『健康歯科チャンネル』のセリフ文字起こしを元に書かれています。

今回は『#4 死んだ歯から出る猛毒とは?』を元にした記事になります。よろしければ動画と合わせてご覧ください。

死んだ歯はこんなふうになる

歯の中心をとおっている神経のことを「歯髄」といいます。歯髄には、血管とか神経も含まれています。

その血管は、歯に血液を供給していて、歯を生きた臓器たらしめています。

歯には新陳代謝がある
生きているわけです。

歯髄を抜く(神経を抜く)ということは、その歯から血管を奪うということですから、本来は生きた臓器であったはずの歯が死んだ歯になってしまう。ただの有機物になってしまうわけです。

死んだ歯、正式には失活歯と呼ばれます。英語ではDead toothです。

自然の摂理として有機物は腐敗は避けられないわけです。どんなに精密に顕微鏡を使って根っこの治療(根管治療)を施したとしても腐敗は避けられません。

その理由については、過去記事 #3 なぜ歯髄を抜くと毒素が出るのかの中で詳しく説明していますので、よろしければご参照ください。

具体的にどんな毒素が出てくるのか

腐敗するということは細菌が増殖して 増殖した結果、腐敗毒素が発生します。

ではどんな毒素が発生するのか?具体的にみていきましょう。

まず挙げられるのが揮発性硫黄化合物です

🧟‍♂️硫化水素、
🧟‍♂️メチルメルカプタン(糞の匂い・殺虫剤原料)
🧟‍♂️硫化ジメチル、
🧟‍♂️ジメチルスルフィド、
🧟‍♂️グリオトキシンなど、

特に硫化水素は非常に毒性が強いです。

「硫化水素」は、火山のある地域の窪地などに溜まっていることがあります。旅行者などが誤ってそのような窪地におちる死亡事故があり危険です。

知らずに混ぜ合わせてしまうと揮発性硫黄化合物を発生させてしまう商品もあり、その家のみならず集合住宅だった場合には近隣にも被害が出るほどの毒性があります。

短絡脂肪酸:
🧟‍♀️プロピオン酸、
🧟‍♀️酪酸

ポリアミン:
🧟‍♀️プトレッシン、
🧟‍♀️ガダべリン

*ガダべリンは、ポリアミンの一種です。脳の中の酵素を破壊させる作用があり、脳機能が低下してしまう被害がでます。

細菌性タンパ質:
🧟‍♀️プロテアーゼ、
🧟‍♀️ホスファターゼ

抗原:
🧟‍♀️リポ多糖類のLPS(うつ病の原因になる)

細菌類:
🧟‍♀️レンサ球菌
🧟‍♀️ペプトストレプトコッカス
🧟‍♀️バクテロイデス
🧟‍♀️紡錘形菌
🧟‍♀️アクチノマイセス

このような細菌が歯の根っこの根管の中で繁殖するわけです。これらの菌が繁殖することによって毒素を発生させます。

このような毒素はどんな作用をするのか?が気になります。詳しくみていきましょう。

ミトコンドリアの酵素障害

死んだ歯から出る毒素がもたらす作用でまず挙げられるのは、ミトコンドリアの酵素障害です。 

ミトコンドリアは細胞の中にあるエネルギー工場のようなもの。

ミトコンドリアで作られるATPは、すべてのエネルギーの元になります。ATPが作られなければ人間は生きていけません。

エネルギーの通貨と呼ばれているほど大切な化学物質「ATP」を作るためには、酵素が必要なのです。

さまざまな代謝を経てATPが作られますが、ミトコンドリアの酵素障害が起きることで、エネルギーが作りづらくなってしまいます。

それによって、全身のエネルギーレベルが下がってしまう問題が起きます。

炎症性サイトカイン

死んだ歯から出る毒素がもたらす作用の2つ目は、炎症性サイトカインという炎症を促す化学物質の増加です。

炎症性サイトカインには、「アイエフエヌガンマー( IFN-ɤ)」や「インターロイキン10(IL10)」などがあります。

IFN-ɤは毒素によって増えてしまい、炎症の火種になったり全身の炎症を促したりします。

免疫の抑制作用をしているインターロイキン10は、毒素によって増加すると、免疫が働きにくい状態になってしまいます。

IFNガンマが上昇することによって、リウマチ、線維筋痛症、橋本病、など自分の体を自分の免疫が攻撃してしまう自己免疫疾患が起きる可能性が高まります。

炎症マーカーCRPが上昇

死んだ歯から出る毒素がもたらす作用の3つ目は、炎症マーカーであるCRPが上昇してしまうことです。

CRPがある一定の数値以上になると、心臓病にかかるリスクが高くなることがわかっています。アメリカ心臓病学会では炎症マーカーCRPの危険値が定められています。

死んだ歯から出る毒素によって、CRPの値が上昇します。

CRPの上昇もまた、自分の体を自分の免疫が攻撃してしまう自己免疫疾患を起こす要因となります。

❹イムノグロブリン類が上昇

死んだ歯から出る毒素がもたらす作用の4つ目は、免疫グロブリン(イムノグロブリン類)の上昇です。

免疫グロブリンとは、血液や体液中にある抗体としての機能と構造を持つ蛋白質の総称です。

IgA, IgG, IgD, IgE, IgM の5種類存在することが知られていて、それぞれ特有の機能を持っています。

侵入してきた病原体やウイルスと戦ったり、白血球の働きを助けたり、アレルギー性疾患や寄生虫感染症などから身体を守るために戦ってくれる働きをしています。

死んだ歯から出る毒素によって免疫グロブリンが増えてしまうと、身体の中で免疫反応が盛んに行われている状態になってしまうので。ざっくりいうとずっと攻撃し合う戦争状態のようなもの。

このような状態が続くと、アレルギーや自己免疫疾患、リュウマチなどの自己免疫疾患が起きやすくなることがわかっています。

遠隔感染

死んだ歯から出る毒素がもたらす作用の5つ目は、遠隔感染が起きてしまうことです。

死んだ歯から出てくる細菌が、血液の流れを通して心臓や腎臓などに流れていきます。

それらの細菌はやがて、「心臓の弁」や「腎臓の血管」などに取り付いて、そこで繁殖します。その結果、心臓病や腎臓病を起こしたり心臓病や腎臓病を悪化させます。そのなかの1つが敗血症性心内膜炎です。

このような状態を遠隔感染と言います。死んだ歯から出ている細菌が、遠隔感染の感染源になるわけです。

ケース①リウマチや線維筋痛症や橋本病

当院には、リウマチを長く患っている方、線維筋痛症で苦しんでおられる方、橋本病の方などが来院されます。

このような自己免疫疾患に悩まされる患者様は、「もしかしたら歯が原因でこのような病気が起きているのではないでしょうか?」とおっしゃり来院されるのです。

そのような主訴の方がいらした場合、特殊な検査法で「特定の歯の問題」と「自己免疫疾患」との関連性を調べます。

もし陽性(歯と病気の関連あり)という結果が出た場合は、毒素を出し続けている歯を抜かないと解決しないということになります。必ず因果関係を確認してからです。

ケース②皮膚炎

ひどい皮膚炎の方も皮膚科の紹介でいらっしゃることがあります。治療をしても改善がみられないので、死んだ歯が原因ではないか?ということで来院されるのです。

こちらの皮膚炎にお悩みだった方は、多くの失活歯(死んだ歯)がお口の中にありました。

入念に調べてから、皮膚炎と関係性のある数本を抜歯。

すると1ヶ月もしないうちに、このような綺麗な肌を取り戻すことができました。

身体が自ら治る力を妨害している原因をなくしてあげれば、身体が修復してくれる。この方のような劇的な改善をたくさん見てきました。

(もちろん、すべての皮膚炎の原因が歯ではありません)

その他、死んだ歯と関係がありうる疾患


【動脈硬化】

炎症性のサイトカインが増えることによって起こる。

【アテローム性血管疾患】
失活歯(死んだ歯)がアテローム性血管疾患の原因となる傾向があるということがわかっています。

アテロームとは特に動脈の内側にたまる垢のようなものです。その垢の内容物としてはコレステロールとかカルシウムとか繊維性の組織などがあります。

これらが垢となって動脈の中にたまって動脈を狭くしてしまうのです。

すると血流が悪くなる。さらに、アテロームという垢がはがれ、それが流れていき、心臓の血管などに詰まれば塞栓を起こしてしまいます。

脳の血管にアテロームの垢が詰まってしまうと「脳卒中」を起こします。心臓の冠動脈と心臓の周りにある血管に詰まると「心臓発作」とか「心筋梗塞」を起こします。

【特殊な部位の感染症】
股関節などにチタン製の人工関節を入れている方のケースで、遠隔感染になり(その場所に細菌が飛び火してしまい)、炎症を起こすことともあります。

【うつ病】
リポ多糖類であるLPSによるミトコンドリア酵素障害によって「うつ病」をひき起こすことがあります。

【慢性疲労】
ミトコンドリアでエネルギーを作ることが出来なければエネルギーを作る効率が下がり、慢性疲労の原因になることがあります。

どのように治療をしていくか

「死んだ歯から毒素が出てくるならば、もう一度歯の根っこに詰めたものを綺麗にして消毒をし、治療をしなおせば(再根管治療)いいのでは?」という考えが浮かぶのではないでしょうか。

この事についての研究は長年され尽くされてきました。

研究結果として、「根っこの治療をやり直したとしてもCRP、IFN-ガンマ、インターロイキン10の値は変化しない」ということがわかっています。

一方で、「毒素が出ているということがわかっている歯を抜歯したらどうなるか」という研究結果において、「CRP、IFN-ガンマ、IL10 などの数値が正常値に戻る」ということがわかっています。

ですから最善の措置としては、毒素が出ている歯を抜歯するということが抜本的で根本的な治療になる、という答えは科学的に出ているということです。

ただ、研究結果でそうだからといって、闇雲に歯を抜くことには賛同しませんし、行いません。

「神経を抜いた歯(死んだ歯)から本当に毒素が出ているかどうかを確認する」ということが重要なポイントです。

なぜなら、失活歯の中には毒素をほとんど出して無い歯もあるからです。

また、その患者さんにリウマチとか動脈硬化とか心臓発作の履歴があるか?そのような基礎疾患があるかどうか?などを確認する必要があります。

家族歴を調べることも重要です。家族歴は、自分の両親や兄弟など親族で心臓血管疾患や脳卒中起こした人がいるかどうか?自己免疫疾患を起こしている親族がいるかどうか?などです。

それを調べることによって、ある程度そういう病気になりやすい傾向があるかどうかを知ることができるわけです。

同じ遺伝子を引き継いているわけですから、神経を抜いた歯に対してより注意を払う必要がある。

歯から毒素が出てるのかどうか?毒素が出ているとしたら、どれくらいの濃度の毒素が出ているか?を知ることが重要であり、それを知ることによって判断材料になります。その後の治療の指針になっていきます。

このようなことを客観的に科学的に知るための測定方法があります。

長くなりましたので、死んだ歯から出る毒素を測定する方法については、次の機会にお話いたします。

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